ネットワークの基礎とコマンド操作


目次

1 授業の目的

2 コンピュータネットワーク

コンピュータネットワークは,一般に比較的小さなネットワークの相互接続によっ て構成されています。それが世界規模にまで発展したものがインターネット (Internet)です。

コンピュータネットワークにおいては,コンピュータ同士が何らかの通信を行い ますが,その多くはクライアント・サーバ型の通信です。 ここでサーバ(server)とはサービスを提供する機器やソフトウェアを意味し, クライアント(client)はサービスを受ける側を意味します。 例えば,Web ページを閲覧する場合,Web ページを提供するのは Web サーバ (HTTP サーバ) であり,Web ブラウザはクライアントです。

2.1 プロトコル

ネットワークにおいて機器同士が通信するためには,予め取り決めた通信の約束 ごとが必要です。それをプロトコル (protocol; 通信規約) と呼びます。

インターネットで使われるプロトコルには, Web ページの閲覧に使う HTTP (Hyper Text Transfer Protocol) やメール配送の SMTP (Simple Mail Transfer Protocol),ファイル転送の FTP (File Transfer Protocol) 等,用途毎に様々 なものがあります。

Web ページを指定する URI (いわゆる Web ページのアドレス) は http: で始ま ることが多いですが,これは HTTP を使って Web サーバと通信することを,Web ブラウザに指定するものです。 ftp: や https: 等の指定により, 別のプロトコルを使った通信を行うこともあります。

2.2 TCP/IP

TCP/IP (Transmission Control Protocol / Internet Protocol) は,インター ネットで用いられる種々のプロトコルの基礎となるプロトコルです 1。 TCP/IP は コンピュータネットワークにおける標準的なプロトコルであり,ネッ トワークに接続されたコンピュータで Web やメール等を利用するには,まず TCP/IP のための適切な設定がなされている必要があります。

3 ネットワーク利用と設定の基礎

3.1 ネットワーク設定の表示

Windows XP では,以下の方法で TCP/IP に関わるネットワーク設定の表示や変 更ができます。ただし,設定の変更は,そのための権限を持つユーザのみが可能 ですので,この授業では扱いません。

3.1.1 ネットワーク設定の表示法

次を順にクリックして「ネットワーク接続」ウィンドウを開きます。

スタートボタン -> マイコンピュータ -> マイネットワーク -> ネットワーク接続を表示する

続いて「ネットワーク接続」ウィンドウ内のアイコンをダブルクリックすると, 「接続の状態」のウィンドウが開きます。

さらに「サポート」タブをクリックすると,ネットワークの基本的な設定を表示 することができます。「詳細」ボタンを押せば,更に詳しい事項がわかります。

3.1.2 ネットワーク設定の変更法(参考)

「接続の状態」ウィンドウの「全般」タブから 「プロパティ」ボタンをクリックすると,「接続のプロパティ」ウィンドウが開 きます。 設定変更の権限を持つユーザは,ここから ネットワークの諸設定を変更することができます。 図 1は TCP/IP のプロパティの表示例です。

図 1: TCP/IP のプロパティ
\includegraphics[width=.6\textwidth, clip]{tcpip_prop.eps}

3.2 TCP/IP の基本事項

3.2.1 IP アドレス

IP アドレス(IP address)は,インターネットに接続された装置を識別す るアドレス(番地)です。0 から 255 の間の 10 進数を 4 つ並べて構成されま す (IPv4 の場合)。

例) 202.252.158.11

IP アドレスはインターネットに接続された各装置を特定するものであり,HTTP 等での通信先や通信元装置の指定は IP アドレスによって行われます。 従って,インターネット上の異なる装置が同じ IP アドレスを持つことは許され ません。 コンピュータに設定できる IP アドレスは, 重複が起きないように割り当てを受けた IP アドレスのみです 2

3.2.2 サブネットマスク

IP アドレスは,装置が接続されたネットワークを表す部分(ネットワークアド レス部)と装置を表す部分(ホストアドレス部)に分けられます。 サブネットマスク (subnet mask) は これらの分離の仕方を指定するためのものです。

例) IP address: 202.252.158.11, subnet mask: 255.255.255.0 だと, ネットワークアドレスは 202.252.158.0

 network A         network B
+==+======+       +======+===
|  |      |       |      |
a  b      ga --- gb      c

3.2.3 デフォルトゲートウェイ

デフォルトゲートウェイ (default gateway) は, ネットワークの出入り口となる装置の IP アドレスです。

同一ネットワーク内の装置同士は直接に通信できますが,異なる ネットワークに接続された装置との通信には,ルータという装置を介す必要が あります。 デフォルトゲートウェイには, 他に指定が無いときに使う,ルータを指定します。

3.3 詳細項目

3.3.1 DHCP (Dynamic Host Configuration Protocol)

IP アドレス等のネットワークの諸設定を自動的に取得するための仕組み。 このサービスを提供する装置を DHCP サーバといいます。

3.3.2 MAC アドレス (Media Access Control address)

ネットワークカードに固有に振られる番号です。

4 DNS

ネットワークに接続されたコンピュータには,IP アドレスに加え,人間が識別 しやすいように名前が与えられています。 その名前をホスト名(host name)といいます。

DNS (Domain Name System) は ホスト名 (Windows ではコンピュータ名と呼ぶ) と IP アドレスを対応させる代表的な仕組みであり, これによるサービスを提供する装置を DNS サーバと呼びます。

例えば,URI に IP アドレスを指定せずとも Web サーバと通信できるのは, ホスト名に対応する IP アドレスを DNS サーバから得ているためです。

5 コマンドを使ったネットワーク操作

ネットワークに関係する操作の多くは, コンピュータへの命令をキーボードから入力する形で行うことができます。 この命令をコマンド (command)と呼びます。

5.1 コマンドプロンプトの使い方

Windows XP 機でコマンドを実行するには, まず,「コマンドプロンプト」という標題のウィンドウを開きます。

スタートボタン -> すべてのプログラム -> アクセサリ -> コマンドプロンプト
ウィンドウ内には,メッセージに続き
 H:¥>
という プロンプトが現われ,カーソルが点滅します。この行を コマンド行 (command line) と言います。 コマンド行に対して, キーボードから コマンドを入力し <ENTER> (エンターキー) を押 すと,そのコマンドが実行されます。

コマンド入力の途中でタイプミスをしたら, <BS> $\langle\leftarrow\rangle$ $\langle\rightarrow\rangle$<DEL> で修正します。 コマンドを始めから入力し直したければ CTRL-c を押します (コントロールキー を押しながら c を押す)3 $\langle\uparrow\rangle$ キーを押せば,過去に実行したコマンド行の内容を,再度表示すること ができます。

5.2 ネットワーク関係のコマンド

Windows XP に標準で付属するコマンドのうち,ネットワーク関係のものを 幾つか紹介します。
  1. ipconfig [/all] : ネットワークの設定表示・更新
  2. ping : 接続テスト
  3. tracert : 目的地までのネットワーク経路表示
  4. nslookup : DNS 問い合わせ
  5. hostname : ホスト名の表示
各コマンドの詳細は,スタートメニューの中の「ヘルプとサポート」 から,コマンド名で検索すれば調べることができます。 command の使い方の要約を表示するには, help command または command /? とします。

6 UNIX 機への遠隔ログイン

6.1 遠隔ログイン

コンピュータの利用開始の手続きを UNIX ではログインといいます。 遠隔ログイン (remote login) とは, 目の前 (local) のコンピュータから,ネットワークで接続さ れている遠隔 (remote) のコンピュータにログインすることです。

ここでは, SSH (Secure SHell) プロトコルを使った UNIX 機への遠隔ログイン を行います。

UNIX の利用については,この授業の後半でより詳しく扱います。

6.2 教育用計算機から UNIX 機への遠隔ログイン

本学の教育用計算機(Windows XP 機)では,SSH 用に拡張が施された Teraterm Pro というアプリケーションが利用できます。

以下に,教育用計算機から UNIX 機に遠隔ログインする方法を紹介します。

  1. スタートボタン -> マイコンピュータ -> drive_i(I:) -> アプリケーション -> Terminal emulator [ttermpro]

  2. Tera Term: New connection ダイアログで次の操作をする

    1. Hosts: に対して接続先のホスト名を入力
    2. Service: として SSH を選択
    3. OK (または <ENTER>) を押す

    ここで警告のダイアログが現れたら,Continue をクリックする。

  3. SSH Authentication ダイアログで次の操作をする

    1. User name: に対して接続先でのユーザー名を入力
    2. Passphrase: に対して接続先でのパスワードを入力
    3. Use plain password to log in を選択
    4. OK (または <ENTER>) を押す

  4. プロンプトが現れれば,ログイン成功。

  5. 遠隔計算機の利用を終了(ログアウト)するには,コマンド行に exit と打つ。



脚注

... ネットで用いられる種々のプロトコルの基礎となるプロトコルです1
TCP と IP は別個のプロトコルであり, TCP/IP は両者を併せた名称です。
... アドレスのみです2
ただし,インターネットから直接参照できないネットワーク(private network) 内では,ある定められた範囲内の IP アドレス (private address) を, 各装置に自由に割り当てることができます。その場合でも,当該ネットワーク内 に IP アドレスの重複があると,正常な通信はできません。
... を押す)3
CTRL-cは実行中のコマンドを強制終了させ るためにも使います。