表計算ソフトにはいくつかの種類がありますがi,この演習では「Excel」を利用します.
「ワークシート」上では,データの入力や計算,統計処理およびグラフの作成を行えます.ひとつのファイルに複数のワークシートを作成することが可能であり,ワークシート間でお互いのデータを参照することもできます.
ワークシートは,複数の「セル」で構成されており,列(A列,B列,C列,…)と行(1行,2行,3行,…)との「交差点」で,その位置を表します.この場合には,「A1」「D5」と言う表記です.セルには,数字だけでなく,文字列や数式,関数も入力可能です.
黒枠のセルがデータ入力可能な(アクティブな)セルです.データを入力して「Enter」を押すと,黒枠がひとつ下のセルに移動します.カーソルキー(←↑↓→)で自由に移動しますii.「数式バー」には,アクティブであるセルの計算式が表示されます.数値や文字列のみが入力されている場合には,セルの表示と同一になります.
左側のセル内のデータが長い文字列などの場合に,一部が隠れて見えなくなることがあります.セル幅を変更するには,ポインタを「列」の境界線上にあわせて適当にドラッグしてください.
表1に従ってデータを入力した後,そのワークシートをファイル名「 ml01.xls 」として保存しますiii.
名称 | 人口(人) |
---|---|
A市 | 80000 |
B市 | 120000 |
C市 | 65000 |
データを入力したワークシートを,"xlsファイル"として保存しますが,その前に保存に関する設定を行います.日常のファイル読み込み・保存の際に,優先的に「Hドライブ」を参照する設定です.
今シートを使って,合計や平均値を算出してみましょう.合計や平均値を計算する際に,数式で使われる演算子(算術記号)が異なります.
コンピュータの算術では,私たちが算数や数学の教科書で習った記号とは違った記号がつかわれます.これは計算機プログラム言語の世界では共通で、四則計算で言えば,足す・引くは同じですが、「×」(乗算)では 「*」(アスタリスク) を,「÷」(除算)では 「/」(スラッシュ) を使います.電卓などもそうなってますよね.
表計算ソフトでは,いくつかの関数が用意されており,たとえば,複数の項目間の合計を算出するには sum関数 を,平均値を算出するには average関数 を使います.
Excelで計算をさせるためには,必要なセルの座標を参照しながら数式を入力する必要があります.数式をセルもしくは数式バーに入力する際は「=」(等号)を数式の先頭に入力し,数値や文字列と区別します.
数式の例:=A1+(A2*B2)
上記の例では,「A1」のセルに「A2」と「B2」のセルをかけたものを加算する数式になっています.
複数のセルで「割合(%)」を計算してみよう.
数式を「コピーアンドペースト」して入力を省略化できますが,その際には相対参照と絶対参照の違いに注意する必要があります.
表計算ソフトでは,関数を利用することで,複雑な数式を入力せずとも計算をさせることができます.
関数を利用する場合は,数式と同様に冒頭に「=」を入力します.その後関数名と,どこからどこまでのセルに適用するのかを入力します.
関数を用いた数式の例:=sum(A1:B20)
上記の例では,「A1」のセルから「B20」のセルまでの数値を総計した結果を表示します.
始点のセルと終点のセルを「:」(コロン)で結ぶのがポイントです.
表計算ソフトでは入力したデータ項目や計算結果を並べ替え(ソート)することができます.
以下のデータ(表2)をもとに解説します.
表2:函館市年齢別人口表(平成15年9月末日現在)
年齢 | 男 | 女 |
---|---|---|
総数 | 130906 | 153295 |
0歳〜4歳 | 5367 | 5076 |
5歳〜9歳 | 5793 | 5610 |
10歳〜14歳 | 6553 | 6210 |
15歳〜19歳 | 8256 | 7542 |
20歳〜24歳 | 7509 | 7973 |
25歳〜29歳 | 8701 | 9296 |
30歳〜34歳 | 9111 | 9824 |
35歳〜39歳 | 7845 | 9174 |
40歳〜44歳 | 7876 | 9090 |
45歳〜49歳 | 8667 | 9929 |
50歳〜54歳 | 11806 | 13218 |
55歳〜59歳 | 10172 | 11795 |
60歳〜64歳 | 8927 | 11098 |
65歳〜69歳 | 8179 | 10488 |
70歳〜74歳 | 7093 | 9694 |
75歳〜79歳 | 5050 | 7725 |
80歳〜84歳 | 2373 | 5192 |
85歳〜89歳 | 1195 | 2857 |
90歳以上 | 433 | 1504 |
このデータでは,若い世代から年齢順に男女の人口および総計が並べられていますが,たとえば「男性人口」をキーにして「昇順」で並べ替えすれば,男性の人口が少ない順にソートされます.
まず「データ(D)」-->「並べ替え(S)」 を選びます.
ここで,優先したいキー(つまり,優先したい列)を選択します.あわせて,「昇順」で並べ替えるのか,「降順」で並べ替えるのか,も選択しておきます.
なお,優先したいキーは複数(3つまで)同時に選択することが可能です.
ワークシート内のデータを用いて作成できるグラフにはいくつかの種類がありますが,元々のデータに応じて適切なグラフを選択する必要があります.代表的な3種類のグラフ(円,棒,折れ線)について,それぞれどう使い分ければよいか確認しましょう.
Excelを起動して,「ファイル(F)」から「開く(O)」を選び,「Hドライブ」に保存されている「ml01.xls」を開きます.
まず,グラフ化したいデータを範囲指定します.範囲を指定したら,メニューの「挿入」から「グラフ」を選択,クリックします.
次に「グラフウィザード」という小ウィンドウが表示されます.「グラフの種類」と「形式」は,「縦棒」のまま,いったん「完了」のボタンをクリックします.するとワークシート内に,グラフが表示されます.
Excelでは,グラフの各部分に,次のような名前がついています.
各要素は何度でも修正することができます.
たとえば,「グラフタイトル」の部分をクリックすると,直接文字入力が可能になり,タイトルの変更ができます.各要素を右クリックすると「書式設定」というメニューが表示され,フォントの種類,サイズなどが変更できます.また,グラフエリア上で右クリックし,「グラフの種類」を選択すると,グラフの種類を変更できます.
下図は例のグラフについて,グラフタイトル,各部分のフォントの種類,サイズやグラフの種類を修正,変更したものです. 各自で書式やグラフの種類を変更してみてください.---> 「グラフ例」を修正
グラフを修正した後、シートをファイル名「 ml02.xls 」として保存します。
グラフにさまざまな種類がありますが,一般的によく用いられるのは下記の種類です.
表1のデータを入力し,グラフを作成します.その後,より読みやすいものへ修正します.
表3:世帯におけるパソコン保有数及びインターネット利用数(平成8〜14年)
年次 | 回答世帯数 | パソコン保有世帯数 | インターネット利用世帯数 |
---|---|---|---|
平成8年 | 4159 | 927 | 137 |
平成9年 | 4443 | 1279 | 284 |
平成10年 | 4098 | 1335 | 450 |
平成11年 | 3657 | 1378 | 698 |
平成12年 | 4278 | 2160 | 1454 |
平成13年 | 3845 | 2230 | 2326 |
平成14年 | 3673 | 2633 | 2989 |
総務省情報通信政策局「通信利用動向調査報告 世帯編」より作成.
注)「インターネット利用世帯数」には,パソコン,携帯電話,携帯情報端末,インターネット対応型テレビゲーム機,TV等からの利用者を含む.
今回は「折れ線グラフ」として作成することにし,グラフの種類のみ指定してみます.すると下の図のようになります.まずはこれを眺めてみましょう.
レポートや論文でのグラフの役目は,自分の意見の根拠を示したり,その補強を行うことです.したがって,第三者が読む際に,最低限必要な項目が盛り込まれていなければなりません.
今回の授業では,「グラフタイトル」「数値軸」「項目軸」および「凡例」を,グラフに必要な要素とします.
「グラフタイトル」は,何を表したいのかを示すために必ずつけておきます.
このグラフタイトルは,後から付与・修正が可能です.具体的には以下の手順で行います.
データの範囲指定によっては,グラフ化の時点で,グラフタイトルが表示されない,もしくは,すでにつけられたグラフタイトルを修正したい場合があります.その場合は,グラフエリア上で右クリックし,表示されるメニューから「グラフのオプション」を選択します.
そこで,グラフタイトルを新規につけることができます.また,数値軸や項目軸に対しても名称をつけることが可能です.
ここで,忘れがちなのは「グラフに番号をふる」ということです.レポートや論文は,文章だけでなく,グラフや概念図,表も含めて構成されています.そのため,登場する順番に番号をふる必要があります.
凡例(はんれい)は,グラフを読む際の手がかりになります.例えば,上の図の折れ線グラフ でいうと,凡例がない場合,どの折れ線がどの項目の変化を示しているのか,非常に読みづらくなります.
グラフ作成の際,ソフトウェアが自動的に凡例を表示してくれますが,微調整が必要ですiv.
凡例の文字列が長く,読みづらい場合,修正する必要があります.ただし,フォントの種類や大きさは,凡例の上で右クリックして表示される「凡例の書式設定」において変更可能ですが,文字列自体は対応するセルを書き換えないと変更できません.
さきほど作成した折れ線グラフを見てください.
まず「数値軸」ですが,0から5000まで500づつ目盛りがとられています.このグラフでは,パソコン保有およびインターネット利用世帯数の経年変化をみたいので,目盛りを細かくとるよりも,大きくとっておいたほうが,読みやすくなります.
一方「項目軸」ですが,この軸に対応する各セルのデータ(文字列)が長いため,読みづらくなっています.そのため項目軸のフォントの大きさを変更するか,もしくは対応するデータ自体を変更して修正します.
数値軸の目盛り幅を変更するには,「軸の書式設定」において,「目盛」を選択したうえで,「目盛間隔」に適切な数値を入力します.その際に「自動」のチェックをはずしておくことをお忘れなく.
ここまで解説してきように,それぞれのパーツを読みやすく修正した結果が,下の図です.説明に必要な要素がきちんと含まれていることを確認してみましょう.