6. 表計算ソフトウェアを用いた計算
1. 今回の目的
- キーボードからワークシートにデータ等を入力できる。(4-1)
- 演算子や関数を使って計算できる。(4-2)
- 式の複写によって計算できる。相対参照と絶対参照の違いがわかる。(4-3)
2. 表計算ソフトウェアについて
この授業では,表計算ソフトウェアとして Microsoft Office Excel 2016 (以下,単に Excel と呼ぶ) を使うとして,説明します。
2.1. 表計算ソフトウェアの特徴
- 簡単に表を作ることができる。
- 多くのデータを使った計算が簡単に行える。
- さまざまなグラフを簡単に作ることができる。
ワードプロセッサとあわせて使うと,論文やレポートの作成などに威力を発揮します。
2.2. 主な構成要素
まず,Windows のスタートメニューから「Excel 2016」を起動して,「空白のブック」を開きましよう。 図1のようなウィンドウが現れます。
図1: Excel の起動画面
2.2.1. ワークシート
データの入力や計算等の処理を行う場所がワークシートです1。
2.2.2. セル
セルはワークシート上の個々の「マス目」です。 データの入力や計算はセル毎に行えます。
- 太い枠で囲まれたセルが現在データ入力可能なセル(アクティブセル)です。
- 他のセルに入力したければ,マウスのクリックやキーボードの矢印キーなどで,アクティブセルを変更します。
- 各セルを列(A列,B列,C列,…)と行(1行,2行,3行,…)との「交差点」で表し,「A1」や「D5」などと表記します。
2.2.3. 数式バー
アクティブセルの(本当の)内容が表示される場所です。
- 数式が入ったセルには計算結果が表示されます。数式自体を確認するために数式バーが使えます。
- 数式バーを使って,アクティブセルの内容を編集することができます。
3. データの入力
3.1. データ入力の基本
- 数値は「半角英数」で入力します。
- 入力後にエンター (Enter) キーを押すと,入力が確定して,アクティブセルが下に移動します。
- 入力後にタブ (Tab) キーを押すと,入力が確定して,アクティブセルが右に移動します。
- 入力中にエスケープ (Esc) キーを押すと,入力が取り消されます。
- 入力を確定した後で元に戻したければ,Ctrl-z (コントロールを押しながら z を押す)などで,直前の操作を取り消す(「元に戻す」)操作をしてください。
3.1.1. 例題
次の表のデータをワークシートの各セルに入力してください。 この入力作業では,
- セル A1 に「名称」と入力し,B1 に「人口(人)」と,C1 に「世帯(数)」 と入力してから,
- 残りを縦方向に入力してみましょう。 Enter と Tab を使い分けましょう。
4. ファイルへのデータ保存
先の例題で作成したワークシートを,Excel の「ファイル」タブ → 「名前をつけて保存」から保存してください。
- 保存する場所は任意ですが,例えば「ドキュメント」フォルダなどにします。
- ファイル名は jinkou.xlsx とします。
- ファイルの種類は Excel ブックです。
5. 計算
5.1. 演算子を用いた計算
表計算ソフトウェアでは演算子を含んだ式をセルに入力することで計算を行えます。 ここで,演算子とは数式の中で使う + や - などのことです。
数式
3 x (4 + 8) ÷ 2
を Excel で使える式にすると,
= 3 * (4 + 8) / 2
となります。
Excel では他のセルの値を使った計算もできます。 例えば,上記の 3 市の人口と世帯数を入力したワークシートでは,適当なセルに次式を入力すれば,3 市の人口の和を求めることができます。
- 他のセルを参照する式の例
- = B2 + B3 + B4
5.1.1. 例題
現在のワークシートに 3 市の人口に関して合計・平均を求める式を入力し,次の図のようにしてください。 人口の平均は「=(B2+B3+B4)/3」でも求めることができますが,「=B5/3」の方が簡単です。 また,式において,セルの列名(B など)は小文字で入力しても構いません。
5.2. 関数の利用
表計算ソフトウェアでは,関数を利用することで,複雑な数式を入力せずに計算ができます。 例えば,先に演算子で求めた合計や平均は,各々,sum 関数と average 関数で求めることもできます。 以下に,世帯数の合計と平均を求める式で sum 関数と average 関数の使い方を例示します。
- sum 関数の利用例
- =sum(C2:C4)
- average 関数の利用例
- =average(C2:C4)
Excel では,複数のセルからなる範囲を指定するために,範囲の始点セルと終点セルを「:」(コロン)で結びます。 始点のセルと終点のセルは異なる列にあっても構いません。 sum や average は,括弧内にセルの範囲を与えることで, 範囲内に存在する数値の合計や平均を求めます。
複数のセルをカンマで区切って sum や average の括弧内に与え,それらの合計・平均を求めることもできます。
関数は任意の式の中で使うことができますので =sum(C2:C4)/3 のような使い方も可能です。
5.2.1. 例題
先の図に示したワークシートの空欄(C5 と C6)に関数を使った式を記入して,世帯数の合計と平均を求めてください。
5.2.2. 基本的な関数
ここでは基本的な関数と,その一般的な使い方をいくつか紹介します。 他の関数や,ここで挙げる関数の使い方の詳細については,「数式」タブの関数ライブラリなどで調べることができます。
- 合計
- =sum(範囲の始点セル:終点セル)
- 平均
- =average(範囲の始点セル:終点セル)
- 最大値
- =max(範囲の始点セル:終点セル)
- 最小値
- =min(範囲の始点セル:終点セル)
- 数字の入っているセルの個数を数える
- =count(範囲の始点セル:終点セル)
- 何らかの値が入っているセルの個数を数える
- =counta(範囲の始点セル:終点セル)
5.3. 式の複写による計算
表計算ソフトウェアでは,セルに入力した数式を他のセルに複写 (copy and paste) することで,数式入力の手間を大幅に省くことができます。
5.3.1. 例題
A 市,B 市,C 市の各々について,一世帯当たりの平均人数を求めます。
以下のことを行ってください。
- セル D1 に「一世帯当たりの平均人数(人)」と入力してから,D 列の幅を調整する。
- セル幅の調整法
- セル幅を変えたい列名間の境界(D 列の幅を変えたければ D と E の間)をマウスでドラッグする
- 列名間の境界でダブルクリックすると,列の内容に応じて,セルの幅が自動調整される
一世帯あたりの平均人数を求める。
- セル D2 に,図中の「」で囲まれた式 =B2/C2 を入力し,A 市の一世帯あたりの平均人数を求める
- B 市と C 市の一世帯あたりの平均人数を求めるために,セル D2 の内容(=B2/C2)を,その下二つの空欄 D3 と D4 に複写
- セル内容の複写法
- 複写元のセルをクリック(複写したいセルが複数の場合にはその範囲をドラッグ)して選択し,例えば右クリックして現れるコンテキストメニューから「コピー」をクリックすることで,セルの内容をクリップボードにコピーする
- 貼り付け先のセルをドラッグで範囲指定してから,エンターキーを押すか「貼り付け」ボタンを押して,クリップボードの内容を貼り付ける
この操作によって,B 市についての値を求める式が自動的に =B3/C3 に,C 市については =B4/C4 になり,欲しい値を求めることができます。
さらに,セル D5 と D6 にも,式を複写して値を求めてください。 今回は,できればキーボードのみで複写を試してみましょう。 複写は矢印キーや Shift-矢印キー(複数のセルを選択), Ctrl-c (コピー) ,Ctrl-v または Enter (貼り付け) でも行えます。
5.4. 相対参照と絶対参照
5.4.1. 例題
A 市,B 市,C 市の各々について,3 市の合計人口における,各市の人口の割合を求めます。
以下のことを行ってください。
- セル E1 に「各市が占める人口の割合」と入力してから,E 列の幅を調整する。
- 3 市の合計人口における,各市の人口の割合を求める。
- セル E2 に図中の「」で囲まれた式 =B2/B5 を入力し,A 市が占める人口の割合を求める。
- セル E2 の式を E3 と E4 に複写して B 市と C 市が占める人口の割合を求めてみる。
- 3 市の人口の合計(セル B5)は複写後の式でも使いたいのに,複写によって式が =B3/B6 や =B4/B7 に変わってしまい,誤った計算をしてしまいます。
- セル E2 の式を =B2/$B$5 に変更する。
- 計算結果は変わりませんね。
- セル E2 の式を,すぐ下の 4 つのセル(B 市や C 市などの欄)に複写する。
- セルの内容は =B3/$B$5 や =B4/$B$5 になり,正しい答えが得られます。
- ワークシートをファイルに保存する。
- 「上書き保存」でファイル jinkou.xlsx を更新してください。
5.4.2. 相対参照と絶対参照
先の例題のように,式中で $ をつけてセルを指定すると,複写しても式中のセルは変わりません。 このようなセルの指定(参照)方法を絶対参照と呼びます4。
一方,$ を付けない参照方法を相対参照と呼びます。 相対参照では,式を入力したセルと,式中で参照しているセルとの,相対的な場所の関係が複写後の式に反映されます。 例えば,セル D2 における =B2/C2 は D2 の「2 つ左のセル (B2) の値をすぐ左のセル (C2) の値で割る」ことを意味します。 そのため,この式を D3 に複写すると,D3 の「2 つ左のセルの値をすぐ左のセルの値で割る」ことになるので,D3 は =B3/C3 となります。
- 重要
- 式の複写や移動をしたら,複写先や移動先の式が正しいかどうかを必ず確認してください。
5.5. オートフィルを使ったデータ入力と式の複写
5.5.1. オートフィル
法則性のある値が(複数の)セルに入っているときに,その続きの値を自動的に生成して,隣接するセルに入力できます。 式が入ったセルについても同様です。
- 方法
- アクティブな(複数の)セルの右下にある小さな ■ をドラッグする。
- 例
- あるセルに 1 が入っているとき,そのセルを使ってオートフィルを行うと,1 の入ったセルを複数作ることができる。
- 1 と 2 が入っている隣接したセルを使ってオートフィルを行うと,3, 4, 5,… が自動入力される。
- あるセルに 1 月 が入っているとき,そのセルを使ってオートフィルを行うと 2 月,3 月,… が自動入力される。
5.5.2. 練習
以下のデータをワークシートに入力してください。 オートフィルが可能な箇所にはオートフィルを用いてみましょう。 入力を終えたら,ワークシートを score.xlsx という名前のファイルに保存してください。
6. 問題
score.xlsx を,次の事項に従い,下の図のとおりにしてください。
- 合計や平均などの値は演算子や関数を使った式で求めてください。
- 複数のセルに式を入力するには,式を複写(コピー)してください。
- G 列の各セルの値を求める際には,全体の平均値(セル F13)の絶対参照を使ってクラス平均との差を求める式を,一つのセル(例えば G2)に入力してから,それを他のセルに複写してください。
- H 列は関数 IF を使った式とします。セル H2 に式 =IF(G2>=0, "+", "-") を入力してみてください。 この式の値は「セル G2 の値が 0 以上ならば+,さもなくば-」です。 二重引用符(")で + や - を囲っているのは,これらを演算子(式の一部)ではなく,ただの文字として扱うためです。
完成したら,score.xlsx に上書き保存してください。