9. 表計算 (1): 表計算ソフトウェアを用いた計算
1 今回の目的
- キーボードからワークシートにデータ等を入力できる。(4-1)
- 演算子や関数を使って計算できる。(4-2)
- 式の複写によって計算できる。相対参照と絶対参照の違いがわかる。(4-3)
- 自分のファイルを保存するのに適した場所について知る。
2 表計算ソフトウェアについて
この授業で使う表計算ソフトウェアは Microsoft Office Excel 2013 (以下,Excel と呼ぶ) です。
2.1 表計算ソフトウェアの特徴
- 簡単に表を作ることができる。
- 多くのデータを使った計算が簡単に行える。
- さまざまなグラフを簡単に作ることができる。
ワードプロセッサとあわせて使うと,論文やレポートの作成などに威力を発揮します。
2.2 主な構成要素
まず,Windows のスタートメニューから Excel を起動して,「空白のブック」を開きましよう。
2.2.1 ワークシート
データの入力や計算等の処理を行う場所がワークシートです1。
2.2.2 セル
セルはワークシート上の個々の「マス目」です。 データの入力や計算はセル毎に行えます。
- 太い枠で囲まれたセルが現在データ入力可能なセル(アクティブセル)です。
- アクティブセルはマウスのクリックやキーボードの矢印キーなどで変更できます。
- 各セルを列(A列,B列,C列,…)と行(1行,2行,3行,…)との「交差点」で表し,「A1」や「D5」などと表記します。
2.2.3 数式バー
アクティブセルの(本当の)内容が表示される場所です。
- 数式が入ったセルには計算結果が表示されます。数式を確認するために数式バーが使えます。
- 数式バーを使って,アクティブセルの内容を編集することができます。
3 データの入力
3.1 データ入力の基本
- 数値は「半角英数」で入力します。
- 入力後にエンター (Enter) キーを押すと,入力が確定して,アクティブセルが下に移動します。
- 入力後にタブ (Tab) キーを押すと,入力が確定して,アクティブセルが右に移動します。
- 入力中にエスケープ (Esc) キーを押すと,入力が取り消されます。
- 入力を確定した後で元に戻したければ,Ctrl-z (コントロールを押しながら z を押す)などで,直前の操作を取り消す(「元に戻す」)操作をしてください。
3.1.1 例題
次の表のデータをワークシートの各セルに入力してください。 この入力作業では,
- 「名称」をセル A1 に入力し,「人口(人)」を B1 に,「世帯(数)」を C1 に入力してから,
- 残りを縦方向に入力してみましょう。
4 ファイルへのデータ保存
4.1 ファイル
まずは一般論です。
- 一般に作業の結果をコンピュータに保存するにはファイルを使います。
- ファイルへの保存の際には,ファイルに名前をつける必要があります。 ファイル名としては,ファイルの内容がすぐにわかるような名前が望ましいです。
- 作業が終了していなくとも,万が一の事故に備えて,作業結果を適宜ファイルに保存することを推奨します。 さらに,アプリケーションソフトウェアの「名前を付けて保存」の操作によってファイル名を変更して保存すると,以前の文書は元のファイル名で残るので,誤ってファイルを消したときのバックアップになります。
4.2 本学の教育用コンピュータにおけるファイルの保存場所
- 本学の教育用コンピュータでは,利用者のファイルを保存する場所として次の4つがあります。
- ホームディレクトリ(H ドライブ; H:)
- ドキュメント
- デスクトップ
- 外部記憶媒体(USBメモリやCD-Rなど)
- ここで,1 から 3 は,どの教育用コンピュータからでも利用できる,各利用者専用のファイルの保存場所です 2。
- 外部記憶媒体を用いる場合はコンピュータウィルスに注意してください。 他のコンピュータで利用したり,他の人が使っていた外部記憶媒体を使うときなどには特に注意が必要です。
4.3 拡張子の表示設定
Windows の規定 (default) の設定では,ファイルの拡張子(ファイルの種類を表す,ファイル名最後の . に続く部分)が表示されません。 このままだとセキュリティや利用上の問題が起こる可能性があるので,すべてのフォルダで拡張子が表示されるように設定しておきましょう。 次の操作をしてください。
- スタートメニューから「コンピューター」を開き,ホームディレクトリ(H:)を開く
- ウィンドウ上部の「整理」から「フォルダーと検索のオプション」をクリックする
- 「フォルダー オプション」ダイアログの「表示」タグの「詳細設定」の「登録されている拡張子は表示しない」にチェックが入っていれば外して,タブ上部の「フォルダーに適用」をクリックする。
4.4 Excel データのファイルへの保存
この資料では「ドキュメント」フォルダに,Excel のデータをファイルとして保存することとします3。
さて,先の例題で作成したワークシートを,Excel の「ファイル」タブ → 「名前をつけて保存」から,jinkou.xlsx というファイル名で保存してください。 ファイルの種類は Excel ブックです。
5 計算
5.1 演算子を用いた計算
表計算ソフトウェアでは演算子を含んだ式をセルに入力することで計算を行えます。 ここで,演算子とは数式の中で使う + や - などのことです。
数式
3 x (4 + 8) % 2
を Excel で使える式にすると,
= 3 * (4 + 8) / 2
となります。
Excel では他のセルの値を使った計算もできます。 例えば,3 市の人口と世帯数を入力したワークシートでは,適当なセルに次式を入力すれば,3 市の人口の和を求めることができます。
- 他のセルを参照する式の例
- = B2 + B3 + B4
5.1.1 例題
現在のワークシートに 3 市の人口に関して合計・平均を求める式を入力し,次の図のようにしてください。 人口の平均は「=(B2+B3+B4)/3」でも求めることができますが,「=B5/3」の方が簡単です。 また,式において,セルの列名(B など)は小文字で入力しても構いません。
5.2 関数の利用
表計算ソフトウェアでは,関数を利用することで,複雑な数式を入力せずに計算ができます。 例えば,先に演算子で求めた合計や平均は,各々,sum 関数と average 関数で求めることもできます。 以下に,世帯数の合計と平均を求める式で sum 関数と average 関数の使い方を例示します。
- sum 関数の利用例
- =sum(C2:C4)
- average 関数の利用例
- =average(C2:C4)
Excel では,複数のセルからなる範囲を指定するために,範囲の始点セルと終点セルを「:」(コロン)で結びます。 始点のセルと終点のセルは異なる列にあっても構いません。 sum や average は括弧内にセルの範囲を与えることで, 範囲内に存在する数値の合計や平均を求めます。
複数のセルをカンマで区切って sum や average の括弧内に与え,それらの合計・平均を求めることもできます。
関数は任意の式の中で使うことができますので =sum(C2:C4)/3 のような使い方も可能です。
5.2.1 例題
先の図に示したワークシートの空欄(C5 と C6)に関数を使った式を記入して,世帯数の合計と平均を求めてください。
5.2.2 基本的な関数
ここでは基本的な関数と,その一般的な使い方をいくつか紹介します。 他の関数や,ここで挙げる関数の使い方の詳細については,「数式」タブの関数ライブラリやヘルプから調べることができます。
- 合計
- =sum(範囲の始点セル:終点セル)
- 平均
- =average(範囲の始点セル:終点セル)
- 最大値
- =max(範囲の始点セル:終点セル)
- 最小値
- =min(範囲の始点セル:終点セル)
- 数字の入っているセルの個数を数える
- =count(範囲の始点セル:終点セル)
- 何らかの値が入っているセルの個数を数える
- =counta(範囲の始点セル:終点セル)
5.3 式の複写による計算
表計算ソフトウェアでは,セルに入力した数式を他のセルに複写 (copy and paste) することで,数式入力の手間を大幅に省くことができます。
5.3.1 例題
A 市,B 市,C 市の各々について,一世帯当たりの平均人数を求めます。
以下のことを行ってください。
- セル D1 に「一世帯当たりの平均人数(人)」と入力してから,D 列の幅を調整する。
- セル幅の調整法
-
- セル幅を変えたい列名間の境界(D 列の幅を変えたければ D と E の間)をマウスでドラッグする
- 列名間の境界でダブルクリックすると,列の内容に応じて,セルの幅が自動調整される
- 一世帯あたりの平均人数を求める。
- セル D2 に,図中の「」で囲まれた式 =B2/C2 を入力し,A 市の一世帯あたりの平均人数を求める
- B 市と C 市の一世帯あたりの平均人数を求めるために,セル D2 の内容(=B2/C2)を,その下二つの空欄 D3 と D4 に複写
- セル内容の複写法
-
- 複写元のセルをクリック(複写したいセルが複数の場合にはその範囲をドラッグ)して選択し,例えば Excel の「ホーム」タブ左側の「コピー」ボタンで,セルの内容をクリップボードにコピーする
- 貼り付け先のセルをドラッグで範囲指定してから,エンターキーを押すか「貼り付け」ボタンを押して,クリップボードの内容を貼り付ける
この操作によって,B 市についての値を求める式が自動的に =B3/C3 に,C 市については =B4/C4 になり,欲しい値を求めることができます。
さらに,セル D5 と D6 にも,式を複写して値を求めてください。 今回は,できればキーボードのみで複写を試してみましょう。 複写は矢印キーや Shift-矢印キー(複数のセルを選択), Ctrl-c (コピー) ,Ctrl-v または Enter (貼り付け) でも行えます。
5.4 相対参照と絶対参照
5.4.1 例題
A 市,B 市,C 市の各々について,3 市の合計人口における,各市の人口の割合を求めます。
以下のことを行ってください。
- セル E1 に「各市が占める人口の割合」と入力してから,E 列の幅を調整する。
- 3 市の合計人口における,各市の人口の割合を求める。
- セル E2 に図中の「」で囲まれた式 =B2/C2 を入力し,A 市が占める人口の割合を求める。
- セル E2 の式を複写して B 市と C 市が占める人口の割合を求める。
- 3 市の人口の合計(セル B5)は複写後の式でも使いたいのに,複写によって式が =B3/B6 や =B4/B7 に変わってしまい,誤った計算をしてしまいます。
- セル E2 の式を =B2/$B$5 に変更する。
- 計算結果は変わりませんね。
- セル E2 の式を,すぐ下の 4 つのセル(B 市や C 市などの欄)に複写する。
- セルの内容は =B3/$B$5 や =B4/$B$5 になり,正しい答えが得られます。
- ワークシートをファイルに保存する。
- 「上書き保存」でファイル jinkou.xlsx を更新してください。
5.4.2 相対参照と絶対参照
先の例題のように,式中で $ をつけてセルを指定すると,複写しても式中のセルは変わりません。 このようなセルの指定(参照)方法を絶対参照と呼びます6。
一方,$ を付けない参照方法を相対参照と呼びます。 相対参照では,式を入力したセルと,式中で参照しているセルとの,相対的な場所の関係が複写後の式に反映されます。 例えば,セル D2 における =B2/C2 は D2 の「2 つ左のセル (B2) の値をすぐ左のセル (C2) の値で割る」ことを意味します。 そのため,この式を D3 に複写すると,D3 の「2 つ左のセルの値をすぐ左のセルの値で割る」ことになるので,D3 は =B3/C3 となります。
- 重要
- 式の複写や移動をしたら,複写先や移動先の式が正しいかどうかを必ず確認してください。
5.5 オートフィルを使ったデータ入力と式の複写
5.5.1 オートフィル
法則性のある値が(複数の)セルに入っているときに,その続きの値を自動的に生成して,隣接するセルに入力できます。 式が入ったセルについても同様です。
- 方法
- アクティブな(複数の)セルの右下にある小さな ■ をドラッグする。
- 例
-
- あるセルに 1 が入っているとき,そのセルを使ってオートフィルを行うと,1 の入ったセルを複数作ることができる。
- 1 と 2 が入っている隣接したセルを使ってオートフィルを行うと,3, 4, 5,… が自動入力される。
- あるセルに 1 月 が入っているとき,そのセルを使ってオートフィルを行うと 2 月,3 月,… が自動入力される。
5.5.2 練習
以下のデータをワークシートに入力してください。 オートフィルが可能な箇所にはオートフィルを用いてみましょう。 入力を終えたら,ワークシートを typing_score.xlsx という名前のファイルに保存してください。
6 練習
typing_score.xlsx を下記のとおりにしてください。 合計や平均などの値は演算子や関数を使った式で求めてください。 H 列の各セルの値を求める際には,全体の平均値(セル G14)を絶対参照した式を一つのセルに入力してから複写してください。 完成したら上書き保存してください。
脚注:
1 Excel ではワークシートをひとつのウィンドウに複数作成することができます。 これらをまとめてブックと呼びます。
2 スタートメニューから「コンピューター」を開けばわかりますが,ホームディレクトリ(H:)は「ネットワークの場所」(ネットワークを使って参照可能な別のコンピュータ)にあります。 また,本校の教育用システムでは,ドキュメントやデスクトップの実体は H: 内のフォルダなので,どのコンピュータからでも自分のものを使えます。
3 「マイ ドキュメント」と「パブリックのドキュメント」がある場合は,「マイ ドキュメント」を保存先にしてください。
4 セルの内容が入力した式から 18 に変わった訳ではなく,計算結果がセルに 18 と表示されているだけです。
5 (ファンクションキーの)F2 を押すとアクティブなセルの中に式が表示され,セルの内容を編集できます。
6 絶対参照や相対参照への変更($の付加や削除)には F4 キーを使うこともできます。