表計算ソフトにはいくつかの種類がありますが,この演習では「Microsoft Office Excel 2003」を利用します. i
ワークシート上では,データの入力や計算,統計処理およびグラフの作成を行えます.ひとつのファイルに複数のワークシートを作成することが可能であり,ワークシート間でお互いのデータを参照することもできます.
ワークシートは,複数のセルで構成されており,列(A列,B列,C列,…)と行(1行,2行,3行,…)との「交差点」で,その位置を表します.この場合には,「A1」「D5」と言う表記です.セルには,数字だけでなく,文字列や数式,関数も入力可能です.
黒枠のセルがデータ入力可能な(アクティブな)セルです.データを入力してEnterを押すと,黒枠がひとつ下のセルに移動します.カーソルキー(←↑↓→)で自由に移動します.ii
数式バーには,アクティブであるセルの計算式が表示されます.数値や文字列のみが入力されている場合には,セルの表示と同一になります.
左側のセル内のデータが長い文字列などの場合に,一部が隠れて見えなくなることがあります.セル幅を変更するには,マウスで画面上のポインタを「列」の境界線上にあわせて適当にドラッグしてください.
表1に従ってデータを入力してください.この入力作業では,「名称」をセル「A1」に入力し,ワークシートの上側や左側に空のセルができないようにしてください. そのワークシートをファイル名 data01.xls として保存します. iii
表1:データの例
名称 | 人口(人) | 世帯(数) |
---|---|---|
A市 | 80000 | 36000 |
B市 | 120000 | 63000 |
C市 | 65000 | 26000 |
データを入力したワークシートを,Excel形式のファイル(Microsoft Excel ブック形式)として保存します.キャンパス内では利用者が作成したファイルを保存する場所として次の4つの場所が考えられます.
なお「Hドライブ」や「マイドキュメント」「デスクトップ」は,どのコンピュータからでも正常にログオンできていれば利用できます.これらの場所はそれぞれの利用者専用なので他の利用者が読み書きすることはできません.
利用者の側で日常のファイル読み込み・保存の際に(優先的に)どの場所を参照するのかを設定可能です.方法は次の通りです.
シート上の値に対して,演算子を使って合計や平均値等を求めることができます.
計算をする際には,数式で使われる演算子(算術記号)とコンピュータで使う演算子では記号が異なるものがあることに注意しましょう.これは計算機プログラム言語の世界では共通で、四則計算で言えば,足す・引くは同じですが,×(乗算)では *(アスタリスク) を,÷(除算)では/(スラッシュ) を使います.電卓などもそうなってますね.
Excelで計算をするためには,必要なセルの座標を参照しながら数式を入力する必要があります.数式をセルもしくは数式バーに入力する際は=(等号)を数式の先頭に入力し,数値や文字列と区別します.
数式の例:=A1+(A2*B2)
上記の例では,「A1」のセルに「A2」と「B2」のセルをかけたものを加算する数式になっています.
それでは,演算子を使って,表 1 から人口の合計と平均を求めて,表 2 のような結果を得てください.「合計」と「平均」の文字も追記してください.
表2:演算子を用いた計算
名称 | 人口(人) | 世帯(数) |
---|---|---|
A市 | 80000 | 36000 |
B市 | 120000 | 63000 |
C市 | 65000 | 26000 |
合計 | 265000 | |
平均 | 88333.33 |
各市の人口がセル「B2 から B4」に入っているとすれば,合計を求めるには,セル「B5」に「=B2+B3+B4」と入力してエンターキーを押せばいいですね. セルの列を指定するアルファベット(ここではB)は小文字で入力しても構いません.
平均は「=(B2+B3+B4)/3」や「=B5/3」で求めることができます.
表計算ソフトでは,関数を利用することで,複雑な数式を入力せずに計算をさせることができます. 表計算ソフトには,いくつかの関数が用意されており,たとえば,複数の項目間の合計を算出するにはsum関数が,平均値を算出するにはaverage関数が使えます.
関数を利用する場合は,数式と同様に冒頭に「=」を入力します.その後関数名と,どこからどこまでのセルに適用するのかを入力します.
関数を用いた数式の例:=sum(A1:B20)
上記の例は「A1」のセルから「B20」のセルまでの数値を総計を求めます.
始点のセルと終点のセルを「:」(コロン)で結ぶのがポイントです.
それでは,表 2 に示したワークシートの空欄を埋めるために,世帯(数)の合計と平均を,関数を使って求めてください.
表計算ソフトウェアでは,セルに入力した数式を他のセルに複写することで,数式入力の手間を大幅に省くことができます.
3 市各々について,一世帯あたりの平均人数と,3 市中で各市が占める人口の割合を求めることにします.
まず,表 3 の中の「」で囲まれた,A 市の計算を行う二つの式を入力し,値を求めてください.
次に,B 市と C 市の一世帯あたりの平均人数を求めるために,「=B2/C2」と入力したセルの内容(式)を,その下二つの空欄に複写してみましょう.例えば,Excel の「編集」メニューの「コピー」でコピーし,下二つのセルを範囲指定してから,「編集」メニューの「貼り付け」等で貼りつけてください. なお,この操作はキーボードの矢印キーや Shift-矢印キー, Ctrl-c (コピー) ,Ctrl-v (貼り付け) を使うことで,マウスを使わずに行うこともできます.
この操作によって,B 市についての値を求める式が自動的に B3/C3 に,C 市については B4/C4 に変わり,思い通りの値を求められることがわかります.
表3:式複写用ワークシート
名称 | 人口(人) | 世帯(数) | 一世帯当りの平均人数(人) | 3 市における人口の割合 |
---|---|---|---|---|
A市 | 80000 | 36000 | 「=B2/C2」 | 「=B2/B5」 |
B市 | 120000 | 63000 | ||
C市 | 65000 | 26000 | ||
合計 | 265000 | 125000 | ||
平均 | 88333.33 | 41666.67 |
では,3 市における人口の割合についても,同様の複写操作をしてみましょう.
セル「B5」にある世帯数の合計は複写後の式でも使いたいのに,複写によって式が「B3/B6」や「B4/B7」に変わってしまい,誤った計算をしてしまいますね.
これを正すために「3 市における人口の割合」の A 市の式を「=B2/B5」から「=B2/$B$5」に変更してください.計算結果はかわりませんね.この式を,B 市や C 市の欄(すぐ下の二つのセル)に複写してみてください.うまく「B3/$B$5」と「B4/$B$5」となって複写されます.
このように,$ をつけてセルを指定すると,複写しても式中のセルは変わりません.このようなセルの指定(参照)方法を絶対参照と呼びます.一方,$ がない参照方法を相対参照と呼びます.
さて,これまでに作業したワークシートをファイルに保存しておきましょう. ファイル名が data02.xls になるように,「名前を付けて保存」の操作をしてください.
表4 のデータを Excel のワークシートに入力(または複写)してから,表の空白部分に適当な値が表示されるように,必要な操作を Excel 上で行ってください.完成したら,ファイル名 data03.xls として保存してください.
表4:函館市年齢別人口表(平成23年4月末日現在)
年齢 | 男性(人) | 女性(人) | 総数(人) | 割合(%) |
---|---|---|---|---|
0歳〜4歳 | 4727 | 4504 | ||
5歳〜9歳 | 5187 | 4880 | ||
10歳〜14歳 | 6021 | 5410 | ||
15歳〜19歳 | 6379 | 6163 | ||
20歳〜24歳 | 5925 | 6149 | ||
25歳〜29歳 | 6493 | 6789 | ||
30歳〜34歳 | 7611 | 7939 | ||
35歳〜39歳 | 9264 | 9771 | ||
40歳〜44歳 | 8477 | 9535 | ||
45歳〜49歳 | 7728 | 9077 | ||
50歳〜54歳 | 8278 | 9565 | ||
55歳〜59歳 | 9983 | 11389 | ||
60歳〜64歳 | 12191 | 14435 | ||
65歳〜69歳 | 8638 | 11032 | ||
70歳〜74歳 | 7693 | 10491 | ||
75歳〜79歳 | 6459 | 9832 | ||
80歳〜84歳 | 4357 | 7595 | ||
85歳〜89歳 | 1981 | 4853 | ||
90歳以上 | 777 | 2699 | ||
全年齢 |
「函館市の人口」(http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/toukei/jinnkou/gi-index.htm)の住民基本台帳人口データ(平成23年4月版)より作成.
表計算ソフトでは入力したデータ項目や計算結果を並べ替え(ソート)することができます.
表 4 のデータをもとに解説します.
このデータでは,若い世代から年齢順に男女の人口および総計が並べられていますが,たとえば「男性人口」をキーにして「昇順」で並べ替えすれば,男性の人口が少ない順にソートされます.
まず 並べ替えを行いたい範囲のセルを選択します.つぎに データ(D) ---> 並べ替え(S) を選びます.ここで,優先したいキー(つまり,優先したい列)を選択します.あわせて,「昇順」で並べ替えるのか,「降順」で並べ替えるのか,も選択しておきます.なお,優先したいキーは複数(3つまで)同時に選択することが可能です.
ワークシート内のデータを用いて作成できるグラフにはいくつかの種類がありますが,元々のデータに応じて適切なグラフを選択する必要があります.代表的な3種類のグラフ(円,棒,折れ線)について,それぞれどう使い分ければよいか確認しましょう.
グラフにさまざまな種類がありますが,一般的によく用いられるのは下記の種類です.
Excelを起動して,「ファイル(F)」から「開く(O)」を選び,先ほど作成・保存した data01.xls を開きます.
まず,グラフ化したいデータを範囲指定します.ここでは各市の人口のグラフを作成しますので,「名称」と「人口(人)」の 2 列のセルから,列タイトルを含んだ 4 行分を範囲指定してください. その後,メニューの「挿入」から「グラフ」を選択,クリックします.
次に「グラフウィザード」という小ウィンドウが表示されます.「グラフの種類」と「形式」は,「縦棒」のまま,いったん「完了」のボタンをクリックします.するとワークシート内に,グラフが表示されます.
Excelでは,グラフの各部分に,次のような名前がついています.
各要素は何度でも修正することができます.
たとえば,「グラフタイトル」の部分をクリックすると,直接文字入力が可能になり,タイトルの変更ができます.各要素を右クリックすると「書式設定」というメニューが表示され,フォントの種類,サイズなどが変更できます.また,グラフエリア上で右クリックし,「グラフの種類」を選択すると,グラフの種類を変更できます.
下図は例のグラフについて,グラフタイトル,各部分のフォントの種類,サイズやグラフの種類を修正,変更したものです. 各自で書式やグラフの種類をいろいろと変更してみてください.---> 「グラフ例」を修正
グラフを修正した後、シートをファイル名を元のまま data01.xls として保存します. 上書き保存の操作をしてください.
脚注