第3回:電子メールの仕組みと設定・利用法
2010/05/06

1.今回の目的

2.授業の内容

  1. 電子メールについての基本的な解説を行う.
  2. 電子メールを送り,受け取る際に覚えておくべきことを解説する.
  3. 実際に電子メールを送ってみる,読んでみる.

3.電子メールとは?

電子メール(以下,メールとよびます)はWWW(World Wide Web)と並んで,インターネットに関連してよく利用されるもののひとつです.まず最初に,メールについての基本的な解説をします.

3-1.メール:ネットワーク上でメッセージを交換する

メールについて,ひとことで説明すると「(インターネットなどの)ネットワーク上において,複数の利用者同士でメッセージを交換するサービス」となります.

3-2.メールを「送る」こと,「読む」こと

ここでは,メールを「送る」ことと「読む」ことについて説明します.

メールを送ったり読んだりするため,一般的にメールプログラムと呼ばれるソフトウェアを利用します.このようなソフトウェアにはいろいろあり,今回の授業ではMozilla Thunderbirdを利用します.この種のソフトウェアをMUA(Mail User Agent)と呼ぶことがあります.

3-2-1.メールを「送る」

メールプログラムを利用し,メールを送った場合,そのメッセージは,いくつかのメールサーバを中継して送られ,相手が利用しているメールサーバによって受け取られた後,それをメールボックスに保存します.

具体的にいうと,メッセージはまず,メールプログラムが指定したメールサーバへと送られます.メールサーバでは,メッセージのあて先を調べ,そのメールサーバの利用者にあてたものである場合,利用者のメールボックスにメッセージを保存します. メールサーバでは,MTA(Mail Transfer Agent)とよばれる役割のプログラムが,その処理を行っています.

もし,あて先がそのメールサーバの利用者にあてたものでない場合,別のメールサーバへメッセージを転送します.転送先のメールサーバでも,同様にあて先を調べることが行われ,最終的にあて先となっているメールサーバに転送され,あて先となっている利用者のメールボックスに保存されます. なお,このような仕組みを動かしているメールサーバをSMTPサーバと呼びます.

メールプログラムからメールサーバへメールを送るとき,また,あるメールサーバから別のメールサーバへとメールを転送するときには,SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)という「約束ごと」にしたがって行われています.

この「約束ごと」をコンピュータ・ネットワークの世界ではプロトコル(protocol)と呼びます.つまりSMTPはメールをサーバ間でやりとりするために必要なプロトコルであるわけです.

このように,メールはあて先に(送り相手が利用しているコンピュータに)直接送られるのではなく,相手が利用しているメールサーバ上のメールボックスに保存されます.またメールボックスに保存できるメールの量には限りがあります.その上限を超えた場合,自分あてのメールが受信できないなどの問題が発生することがあります.

3-2-2.メールを「読む」

では,メールプログラムを利用し,自分あてのメールのメッセージをどのようにして「読む」ことができるのでしょう.

さきほど説明したように,自分あてに送られてきたメールは,メールサーバにあるメールボックスに保存されています.ここでメールプログラムを利用して,そのメールを読めるようにする仕組みが必要です.

このような仕組みを動かしているメールサーバをPOPサーバIMAPサーバと呼びます.これはそれぞれのメールサーバにおいてPOP(Post Office Protocol)IMAP(Internet Message Access Protocol)というプロトコルを利用して(メールボックスに保存されている)メールを読むところから,このような名前がつけられています.

今回の授業ではIMAPサーバを利用することにします.以下ではメールを「読む」ときにPOPサーバと利用する場合とIMAPサーバを利用する場合の違いに具体的にふれながら説明していきます.

3-2-3.POPサーバを利用してメールを「読む」

POPサーバでは,メールプログラムから要求があったとき,まず.サーバに接続を許された利用者であるかどうかを確認します.この確認にはユーザ名とパスワードの組み合わせを用い,利用者は,メールプログラムを通じて自分のユーザ名とパスワードを入力します.

利用者として確認されたのなら,POPサーバは,メールプログラムの要求に応じ,利用者のメールボックスにあるメールを取り出し,メールプログラムへと渡します.

メールプログラムでは,受け取ったメールを,利用者個人の保存場所に保存することで,メールを読むことができるようにしています. i

ここまでの説明にもとづいていうと,メールプログラムを利用して,メールを送るためには,そのためのメールサーバを指定し,また,読むためには,自分のメールボックスからメールを取り出すためのPOPサーバを指定する必要があるわけです. ii

ここまでの説明を図示したものがメール送受信概念図です.こちらも参考にしてください.

3-2-4.IMAPサーバを利用してメールを「読む」

IMAPサーバを利用して(つまりIMAPというプロトコルで)メールを読むことの大きな特徴は自分宛に届いたメールをメールサーバの側だけで管理できるという点です.

POPサーバを利用する方法では,メールサーバ(POPサーバ)の中にある自分のメールボックスからメールを取り出し,それをメールプログラムに渡しています.ですのでメールプログラムにメールを渡した時点で,メールサーバからそのメールは削除されます. iii

IMAPサーバにメールプログラムから要求があったとき,利用者のユーザ名とパスワードの組み合わせで接続を許可するかどうか判断します.これはPOPサーバの場合と同じです.ただし最近ではIMAPサーバとメールプログラムとの通信を暗号化することで安全性を高めています. iv 接続が許可されたならば,利用者のメールボックスにあるメールからまずは送信者や件名といったメールそのものに関する情報(ヘッダ情報)だけをメールプログラムに渡します.そして利用者が必要とする(読みたいと思う)メールをその都度メールプログラムがメールサーバから取ってきます.

IMAPサーバを利用する利点はいくつかあります.ここでは2つほど紹介します.

メールを読んだかどうかの未読管理をサーバ側で行えるという利点があります.POPサーバを利用する場合は通常まだ読んでいない,つまり未読のメールを一度にメールプログラムがメールサーバから受け取ってくることになります.ですので未読の管理はメールプログラム側で行うことになります.1台のコンピュータでメールを利用している場合は良いかもしれませんが,複数のコンピュータを利用したり,メールプログラムを使い分けている場合は不便に感じることもあるでしょう.IMAPサーバを利用すると未読管理をサーバ側で行えるので複数のコンピュータやメールプログラムを利用していてもメールを読み逃すことがありません.また通常はメールサーバ(IMAPサーバ)にメールが残りますので,いつでも同じメールを再読することができます. vただし,メールサーバにメールを残し過ぎるとサーバにあるメールボックスの容量が足りなくなって,新規にメールを受信できなくなるおそれがありますので注意しましょう.

メールボックスの細かい管理が行える点も大きな特徴です.通常メールプログラムには複数のメールボックスを作成・管理する機能がありますが,POPサーバを利用してメールを読む場合,これはそのメールプログラムを利用しているコンピュータ上に作成して管理することになります.したがって複数のコンピュータ同士で同じメールボックスを利用することはできません.IMAPサーバを利用するとメールサーバの側でメールボックスを作成し管理することが可能です.したがって複数のコンピュータやメールプログラムを利用していても同じメールボックスを利用できることになります.

3-3.メールアドレス

手紙やはがきを送る際に,送り先の住所,氏名を書かなくては届かないように,メールを送る際にも「住所」と「氏名」の役割を果たすものが必要となります.これがメールアドレスです.

具体的にはメールアドレスとは以下のようなものです.

c20299ab@hak.hokkyodai.ac.jp

ここで,「@」の前と後ろにわけて解説します.

「@」の後ろ側の部分は,一般的にそのメールアドレスにおける「住所」の役割を果たしています.この部分によって,メールの配信先となるメールサーバが決まります. vi

「@」の前の部分(c20299ab)は,そのメールアドレスの利用者に割り当てられた利用者名(ユーザ名)であり,手紙の宛先における「氏名」に相当します.

4.メールの初期設定を行う

今回は,メールプログラムとしてMozilla Thunderbirdを利用しますが,まずは担当者の指示に従って,ソフトウェアを起動します.

4-1.初期設定のための確認事項

メールプログラムを利用する場合,ここまでに解説したいくつかの情報が必要となります.その情報は担当者から解説されます.

4-2.初期設定を行う

Mozilla Thunderbirdを起動した後,「北海道教育大学函館校 情報システム」のページの「メールサーバ」を参照しながら,担当者の指示に従い,必要な事項を入力します.

5.メールを利用する

5-1.まずは送ってみる

初期設定が完了したら,まずはメールを送ってみましょう.

メールを送る際に,以下の事柄を必ず入力しなくてはいけません.

相手のメールアドレスは,さきほど説明した形式のものとなります.

件名(サブジェクト)は,これから送ろうとするメールの内容をわかりやすく示したものにします.

送り先を間違えた場合

メールを送る際に,送り先のメールアドレスを入力ミスした場合,どうなるのでしょうか.もちろん正しいメールアドレスが入力されていないので相手には届かないのですが,メールサーバ(において処理を行っているMTA)が,そのことを知らせてくれることがあります. vii

メールサーバ(MTA)から送信されたメッセージの例」にそのようなメッセージの例がありますので,参考にしてください.

5-2.読んでみる

IMAPサーバに接続してみて,自分あてに送られたメールを読んでみます.詳しいやり方は担当者の指示にしたがいます.

5-3.返事してみる

送られてきたメールに対して返事を送ります.詳しいやり方は担当者の指示にしたがいます.

5-4.複数の相手へ同時に送ってみる

同じメッセージのメールを同時に複数の相手へ送ることができます.

詳しい方法については,担当者から指示がありますが,多くのメールプログラムではメールアドレスを「,」(カンマ)で区切って入力することで,複数の相手に送ることができます.

6.メールの利用における注意と補足

6-1.メッセージに名前を記す,署名をつける

6-1-1.メッセージに名前を記そう

メールのメッセージには,あて先のメールアドレスやサブジェクト(件名)を記すことはもちろんですが,メッセージの本文においても,差出人の名前を書いておくと,受け手からは,誰から送られてきたのか,すぐにわかるので推奨します.

多くのメールプログラムでは利用者の名前を登録しておくことで,メール本文に(ヘッダ情報の一部として)名前を追加してくれます.したがってそのようなメールを読んだときにもメールプログラムに送り主の名前が表示されることがあります.ただし,携帯電話などの端末から送信したメールにはそのような情報が追加されないことが多いので,そのメールを受け取った側も送り主が誰かわかりづらい場合があります.現在では携帯電話からのメール送信も多くなっていますので必ずメールの本文に名前を書くようにしましょう.

6-1-2.メッセージに署名をつける

メールでは,送り手を示すために,メッセージの最後に「署名」をつけておくことがあります.以下に署名の例を挙げます.

 -- 
  函館 太郎
  北海道教育大学函館校
  人間地域科学課程・情報科学専攻
  c20299ab@hak.hokkyodai.ac.jp

上記のものは,あくまで例です.署名をつける際には,どのような相手に,どのような内容,文脈においてメッセージを送るのかを考えたうえで,署名に記す項目を考えましょう. 署名の「長さ」もそれによって異なりますが,あまり行数の多いものは避けるほうが良いでしょう.

6-2.メッセージにファイルを添付する

6-2-1.ファイルを添付することの意味

メールにて交換されるメッセージの中味は主にテキスト,つまり文字情報となっています.

しかし,画像ファイルやワープロの文書ファイルといったテキスト(文字情報)でないものを送ることができます.この場合,メールのメッセージにそれらのファイルを「添付」する形で送ります.

メールのメッセージにファイルを添付して送ることができます.ただし,どんなファイルでも添付して送って良いわけではありません.

ファイルを添付して送るのは,文章(テキスト)だけでは伝わらない,または,伝えにくい情報を伝えるたい場合に行うべきでしょう.

例えば,図やグラフを送りたい場合,これを文章だけで表現するのは難しいでしょうし,場合によって写真などの画像を送りたい場合もあるでしょう.逆に,数行の文章のみならば,ワープロの文書ファイルにして送る必要はないわけです.

つまり,送り手には,ファイルを添付して送る前に,どのような情報を,どういった文脈で受け手に伝えたいのか,をよく考えて判断することが必要となります. viii

なお,メールのメッセージにファイルを添付する方法について,今回の授業で取りあげませんので,メールプログラムの「ヘルプ」などを参照してください.

6-2-2.添付するファイルの大きさに注意する

ファイルを添付して送る場合,その大きさに注意します.

その理由は,メッセージの受け手が利用するコンピュータやネットワークの環境がどのようなものなか,わからないことがよくあるからです.例えば,受け手が回線容量の小さいネットワークを利用していれば,ファイルを添付して大きくなったメッセージを受け取るには時間がかかるでしょう.

一般的には数MB(メガバイト)以上のファイルを送りたい場合は,持ち運び可能な記録媒体に保存したうえで,相手に渡すなどの方法をとります.

6-2-3.コンピュータ・ウィルスとの関連で注意しておくこと

注意したいのは,この「添付ファイル」の仕組みが悪用される場合があることです.コンピュータ・ウイルスの中でメールを通じて拡がる種類のものは,この仕組みを利用しています.

さらに,コンピュータ・ウィルスの中には送り主を騙り,ウイルスを添付ファイルとして送ってくる種類のものが多くあります.そのため添付ファイルの送り主が信頼できる相手であっても,その人がウイルスに感染したコンピュータを利用していて,気づかない間にウイルスを送っている可能性があるのです.

そのため,送り主が信用できる相手であっても,メールのメッセージにファイルが添付されている場合,ひとまずその添付ファイルを開く前に送り主に確認することをお勧めします.

また,見知らぬ相手から送られてきたメールにファイルが添付されていた場合,それがウイルスである可能性が高いので,その添付ファイルを開いてはいけません. もし.送られてきたメールの添付ファイルがウイルスかもしれないと迷って判断できない場合,情報機器の管理者に相談することを勧めます.

メールの送り手としては,ウイルスが添付されたメールと相手に間違われないためにも,ファイルをメッセージに添付して送りたい場合は,あらかじめ知らせておくなどの方法をとるようにしましょう.

6-3.メッセージに使えない「文字」がある

メールのメッセージに使ってはいけない「文字」があります.

メールに関する技術的な取り決めにおいて,メッセージとして使えない「文字」があります.いわゆる「半角カナ」とよばれている文字 ix や「丸数字」「(株)」といった記号です. x

6-4.メールのメッセージを相手がすぐに読むとは限らない

メールは,「仕組み」のところで説明したように,直接相手に届くのではなく,いったん,相手が利用しているメールボックスに届きます.ですので,相手がメールプログラムを用いて,メールボックスを確認しないと読まれません.

さらに,相手に読まれたとしても,そのことを判断する方法は通常ないので,受け取った側は,読んだ旨の返事を出す方が良いでしょう.もちろん,送り手が返事を求めていない場合もあるので,メールの内容を読んだうえで判断することですが.

6-5.その他の注意点

わたしたちはメールを含めてさまざまなサービスやプログラムを利用して,インターネット上でコミュニケーションを行っています.それらについて注意すべき事柄をまとめた書籍やネット上の情報は多くありますので自分で読みやすいと思うものをさがしてみてはどうでしょうか.

7.次回の予告

次回の授業ではパスワードの変更について学びます.初回の授業で配布した利用情報通知書には「初期パスワード」が記載されていました.同じく記載されていた「ユーザ名」との組み合わせにより函館校教育用情報システムを利用できる資格をもっているか判断しているのですが,実はパスワードは利用者が各自で管理するものです.安全性の面からも定期的にパスワードを変更することをおすすめします.

来週までに以下のウェブサイトを参考に新しいパスワードを考えてきてください.

JPCERT/CC REPORT(2004年11月4日号)の[今週の一口メモ]を参考のこと.

脚注

  1. 多くのメールプログラムでは初期の設定として,メールボックスにメールを残さないという設定にしてあるようです.設定を変更することで,メールをメールボックスに残しておくこともできます.
  2. メールプログラム(MUA)によっては,メールを送るために指定するメールサーバのことを「SMTPサーバ」ないし「送信サーバ」とよび,POPサーバのことを「受信サーバ」とよぶものがあるようです.
  3. POPサーバを利用する場合でも,メールプログラムの設定によりメールサーバ(にある自分のメールボックス)に「読んだ」メールを残したままにすることが可能です.
  4. 通信を暗号化する方法として,SSL(Secure Socket Layer)やTLS(Transport Layer Security)といった方式が使われています.
  5. メールプログラムの設定や操作によってIMAPサーバに残したメールを削除したり,一度読んだメールを未読の状態に変更するなど,さまざなことができます.またIMAPサーバを利用していても,メールサーバからメールを移動させて自分が利用するコンピュータに保存しておくことももちろんできます.
  6. ここにある「ac」や「jp」にも意味があるのですが,ここでは詳しく解説しません.ここにメールサーバの名前が明示されることもあります.
  7. メールアドレスの入力ミス以外でも,メールサーバにてメールの送信に問題が起こった場合,何らかのメッセージが送られてくることがあります.
  8. 当然のことですが,添付するファイルを開くことのできるアプリケーションが,受け手においても利用可能であるかどうか,あらかじめ確認する必要があります.
  9. メールのメッセージで利用可能な文字は,「ISO-2022-JP」という文字コード表に含まれているものです.しかし,この文字コード表では,いわゆる「半角カナ」を扱っていません.したがって,「半角カナ」をメッセージに利用することはできないのです.
  10. 「丸数字」や「(株)」といった記号は「機種依存文字」とよばれ,特定のコンピュータ,OSでしか扱えません.したがって,送られてきたメッセージが「文字化け」して読めないことがあります.例えば,Windowsでは読める文字でもMacOSでは読めなくなる,ということが起こりえます.